本記事は以下の方を対象としています。
- WiMAXプロバイダ(WiMAXをネットで代理販売)から購入して費用を抑えたい方
- 契約継続月数によってどのプロバイダがどれぐらいオトクかを知りたい方
- WiMAXについての検索上位のサイトの比較を見てもなにか納得できない方
WiMAX比較サイトでよくわからない点
WiMAXについての検索上位のサイトを見ても、私には以下の点がよくわかりませんでした。
- 比較によく使用される指標「実質月額」とは何なのか?正しい指標なのか?
- 「どれぐらいの期間」で契約し続けると「どのサービス」が他と比べて「どれほどオトク」になるのか?
これを解決するために、グラフをプロットして比較してみました。
比較サイトでよく使われている「実質月額」とは?
はじめに、多くの比較サイトで使用されている「実質月額」がどのような指標なのかを見てみます。
実質月額=2・3年間の実質費用÷ 24・36か月
実質費用=支払総額ー特典総額
ただし、実質費用は月額料金、工事費・端末代金などの総額(途中解約時の違約金を除く)から割引・特典を差し引いた1か月あたりの料金目安であり、実際に請求される金額とは異なります。
(価格ドットコムの料金説明からの引用)
しかし、この指標には下記のように、いくつかの問題点があります。
- 契約期間が2・3年に固定されている(1年前後の解約を考慮していない)
- 月ごとに実際に支払う額を知りたいのにそれが反映されていない
従来の「実質月額」がどのような指標であるかは、グラフを描いてみるとすぐにわかります。

この図で横向きの青色矢印が1~24・36ヶ月の契約継続期間を表していて、上向きの橙色矢印が実質費用(=支払総額ー特典総額)を表しています。
このように見ると、「実質月額(2・3年間の実質費用÷ 24・36か月)」とは、青色矢印の末端から橙色矢印の先端に向けて引いた直線の傾きであると言えます。
ここで、例えば次の図のような料金体系を考えてみましょう。
これは、2・3年の契約継続期間を過ぎてから月額料金が上がるような料金プランです。

先程のグラフと重ねてみましょう。

おや?
後で考えた料金プランの方が、橙色矢印が短い、すなわち直線の傾きがかなり小さいですね。
そして、直線の傾きが小さいということは、「実質月額」もかなり小さくなるということですよね。
でも、2つの料金プランの実質費用のグラフが途中まで重なっているのを見るに、短期で契約する場合には2つのプランのオトクさに、そこまで大きな差が出るようには全く見えませんよね?
はたして、このような「実質月額」という指標は、「オトクさ」を知る上でうまく機能している指標なのでしょうか?
そこで、今回は公式サイトの現時点での情報のみを使用して、支払額や月額のグラフを描くことで、これらの解決を試みました。
本記事の比較で使うグラフの描き方
考え方自体は多くの比較サイトと同じです。
キャッシュバックと費用についての関係を考慮して、次のような契約継続月数に対する実質費用のグラフを考えていると仮定します。

このグラフを見るとわかる通り、価格に関わっている要素は以下の通りです。
- 初月料金【①の要素】
- 特典・キャッシュバック額【②の要素】
- 月額料金(ただし段階的に変化する場合がある)【直線の傾き(③で変化する)】
- 端末代金(分割支払いも同額払うため一括支払いと見なす)【①の要素】
- 事務手数料【①の要素】
ただし、このようなグラフが適用できない料金体系のプロバイダもあります。
(例:カシモWiMAXでは端末代金を分割払いする契約期間において、同額のキャッシュバックが毎月行われます。)
今回は、簡単のためにこちらのプロバイダは比較対象から外しております。ご了承ください。
グラフを描くためには、上記の要素を数式にしていく必要があります。
私は次のように設定しました。
契約継続期間 $t=1\,,2\,,\cdots$ に対する実質費用 $p_t$ は以下のパラメータをもつような関数です。
- $p_0$ :初月料金
- $p_\text{cb}$ :キャッシュバック額
- $t_\text{cb}$ :キャッシュバックを申し込むタイミングの契約継続期間月(申し込んだら振り込みが確定したと考えています。)
- $m_1\,,m_2$ :月額料金(一定料金のプロバイダでは $m_1=m_2$ 、1度だけ月額料金が切り替わるプロバイダでは $m_1\neq m_2\,.$)
- $t_{12}$ :月額料金が $m_1$ から $m_2$ に切り替わるタイミングの契約継続期間月(一定月額の場合は $t_{12}=0$ とする。)
- $p_\text{d}$ :端末代金
- $p_\text{f}$ :事務手数料
このとき、関数 $p_t$ を次のように表します。
\begin{align}
&p_t:=\widetilde{f}_t+p_0+p_\text{d}+p_\text{f}\,.\\
&f_t:=\begin{cases}
m_1t & (t< t_{12}\,\text{または}\,t_{12}=0)\,,\\
m_1 t_{12} + m_2(t-t_{12}) & (t\geq t_{12})\,.
\end{cases}\\
&\widetilde{f}_t:=\begin{cases}
f_t & (t< t_\text{cb})\,,\\
f_t-p_\text{cb} & (t\geq t_\text{cb})\,.
\end{cases}\\
\end{align}
このように定義した関数を使用して、グラフを描いていきます。
また、同時に契約継続期間 $t=1\,,2\,,\cdots$ における実質平均月額を次のように定義します。
\begin{align}
\dfrac{p_t}{t}\,.
\end{align}
これは要するに、実質費用を契約継続期間で月割りした平均です。
比較サイトでよく見る「実質月額」という語に対して持つ印象と近い指標なのではないでしょうか。
契約月数 $n$ を非常に大きくすると初期費用やキャッシュバックの影響が小さくなるため、次第に平均月額に近づいていくことがイメージできると思います。(現実的にはあり得ませんが)
グラフを比較してわかったこと
キャッシュバックなど特典についてですが、タイミングによって大きくその内容が変わるので、こちらの比較した情報はすぐに役立たなくなると思います。
【※2024年1月23日時点】各WiMAXプロバイダの比較グラフ(キャッシュバックを受け取れた場合)
実質費用のグラフとわかること
百聞は一見にしかずということで、結論をグラフで出しますと、次の画像のようになりました。
ただし以下のグラフでは、背景の半透明な水色・橙色・緑色のエリアは、順に契約開始から1年目・2年目・3年目の期間であることを示しています。

【このグラフからわかること】
- 1年の契約ならヨドバシWiMAXが一番安い。
- キャッシュバックを受け取れた場合は、14か月目にGMOとくとくBBが最も安くなる。
- そして、それ以降も契約を継続するほどGMOとくとくBBが相対的に更に安くなっていく。
- 10か月目までの契約ならシンプルWiFiが2番目に安い。
- 22か月の契約のタイミングでBIGLOBEが2番目に安くなる。
実質平均月額のグラフとわかること

- 2年目以降、GMOの実質平均月額は4,000円に落ち着いていく。
- 1年目のヨドバシとBIGLOBEの実質平均月額は差が大きいものの、2年目後半から共に4,000円台後半になっていく。
【※2024年1月23日時点】各WiMAXプロバイダの比較グラフ(キャッシュバックを受け取れなかった場合)
実質費用のグラフとわかること
そして、キャッシュバックを「ホームページに書かれていたキャンペーン内容と違った」「うっかり忘れる」等の理由で受け取れなかった場合には、こちらの画像のようになります。

【このグラフからわかること】
- 1~2年の契約ならヨドバシWiMAXが一番安い。
- 2年目の途中まではシンプルWiFiが2番目に安い。
- 最初の差額は端末代金の影響が大きく出ている。
実質平均月額のグラフとわかること

【このグラフからわかること】
- ヨドバシWiMAXの実質平均月額は大体4,500~4,700円台の範囲に留まる。
- シンプルWiFiの実質平均月額は契約期間によらず大体5,000円ちょっとであり、変動しない。
- GMOとBIGLOBEの実質平均月額は初期費用が影響し、1年目の間は上2つの月額よりも1,000円以上高め。
以上の比較から、1年未満の短期間の契約であればシンプルWiFiやキャンペーンを利用したヨドバシWiMAX(ギガ放題プラスS)がオトクであることがわかりました(【※2024年1月24日時点】)。
一方、長期での契約で更にキャッシュバックを受け取れた場合には、2年目の中盤からGMOやBIGLOBEでの契約がオトクになっていきます。
BIGLOBEは月額料金の安さが、GMOはキャッシュバック額の大きさと月額料金の安さがその要因です。
企業の立場では、顧客データのキャッシュバックの受け取り率や平均契約継続月数から、どのような料金プランでどれぐらいの利益が出せるのかを概算しているのだと思います。
同じ製品でも各プロバイダによって、どこで消費者にオトクだと思わせたいのかという点で差別化をして、結果的に人気に差が出ているのは興味深いです。
まとめ
今回、この記事ではグラフをプロットすることで、これまで使用されてきた「実質月額」という指標がどのようなものであったかについて把握し、実際に支払う額と実際の月額料金を計算することができました。
これによって、何か月間の契約ならこのサービスが他と比べて何円オトクかを具体的な数値で比較することができました。
ただし、キャッシュバックなどの特典内容やサービスを取り巻く環境の変化は大きく急速であるため、本記事の比較結果はすぐに役立たなくなってしまうことでしょう。
しかし、本記事でまとめた考え方自体は、どこか別のタイミングでも使えるものだと思います。
例えば、光回線や各種インターネット契約でも、工事代を初期費用と見なすと同じ考え方ができるのではないでしょうか?
そこで、こちらに今回の計算による各サービスの比較ができるアプリを公開したので、もしよろしければご活用ください。
(本当はデザインの改善やグラフのプロットの実装などをしたかったのですが、引っ越し前で時間が足りませんでした…)
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