階差数列の考え方 センター試験数学を例に

数学・情報
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数列の公式って全然覚えられないですよね。
なので、私は公式を覚えるのをやめて毎回図に書いて、1歩1歩順番に考えていくことにしていました。
今回は、まず抽象的な階差数列を図で理解して、それから実際のセンター試験の問題を解いてみることにします。(難しかったら先に問題を解いてから見てもらっても大丈夫です。)

抽象的な階差数列(難しかったら後でも大丈夫です)

初めに、数列 $\curl{z_n}\,\,(n=1\,,2\,,\cdots)$ を考えることにします。
そして、この数列の階差数列 $\curl{z_n}\,\,(n=1\,,2\,,\cdots)$ の一般項を次式で定義します。

\begin{align}
w_{n}:=z_{n+1}-z_{n}\,.\label{diff_seq}
\end{align}

すなわち、$z_{n+1}=z_{n}+w_{n}$ であり、これは数列 $\curl{z_n}$ の項 $z_{n+1}$ がその1つ前の項 $z_{n}$ と $w_n$ の和になることを意味しています。

これらの数列の各項の関係を表した図がこちらです。

階差数列の一般項と元の数列

なぜ今回このような図を考えたかというと、工学などで階差数列が重要になる場面があるためです。
例えば状態モデルと呼ばれる数理モデル(例:個体数の変化など)では、現在の状態が1つ前の状態とランダムなノイズの和として表現されます。
このようなモデルにおけるノイズとは、まさしく今回見た階差数列です。

ここで、\eqref{diff_seq}を繰り返し使うことで、以下の式が成り立つことがわかります。

\begin{align*}
z_2
&=z_1+w_1\,,\\
z_3
&=z_2+w_2\\
&=z_1+w_1+w_2\,,\\
z_4
&=z_3+w_3\\
&=z_1+w_1+w_2+w_3\,.
\end{align*}

上の図を見ると、これらの式と $z_1$ をスタートとして青い矢印 $w_k\,\,(k=1\,,2\,,\cdots\,,n-1)$ を辿ると $z_n$ に行きつくことが、対応しているとわかります。

このことから、数列 $\curl{z_n}$ の一般項は次のように表せます。
(数学的帰納法を使えばこの等式の成立も簡単に証明できます。)

\begin{align}
z_n=z_1 + \sum_{k=1}^{n-1}w_k\,.\label{diff_sum}
\end{align}

そして、\eqref{diff_sum}の第2項の $\sum_{k=1}^{n-1}w_k$ は、数列 $\curl{w_n}$ が等差数列や等比数列の場合には、教科書でよく知られた和の公式などを使って計算ができます。

改めて、これらの数列の関係を図にまとめてみます。
数列の一般項が直接求められないときでも、階差数列を経由してその一般項を求めることで、元の数列の一般項を求められるときがあります。

階差数列と元の数列の関係

さらに言うとこの図の関係は、微分積分の関係を離散化したものと考えることができます。
階差数列とは、元の数列の差分を取ったものであり、微分の離散版です。
そして、階差数列 $\curl{w_n}$ から元の数列 $\curl{z_n}$ の一般項を求める計算は和分であり、積分の離散版です。
今回は脱線しないようにこれ以上の言及は避けますが、興味があれば調べたり考えたりしてみてくださいね。

具体例① センター試験の問題

では、次に具体例を見ていきましょう。
実際にセンター試験で出題された問題です。

数列 $\curl{z_n}$ は最初の3項が順に$b,\,c,\,a$であり、その階差数列 $\curl{w_n}$ が等差数列であるとする。このとき、 $\curl{w_n}$ の一般項、そして $\curl{z_n}$ の一般項を求めよ。
なお、小問(1)より、 $b=-\frac{1}{2}a\,,c=-2a$ は求められているものとする。
(センター試験 数学2B 2006 (3)(4) 改題)

数列 $\curl{z_n}$ から階差数列 $\curl{w_n}$ に変換する

まず、問題文から読み取れることを図に書き込んでおきます。

数列から階差数列への変換

なお、 $z_1=b\,,z_2=c\,,z_3=a$ より数列 $\curl{w_n}$ の各項は、$w_1=z_2-z_1=c-b=-\frac{3}{2}a\,,w_2=z_3-z_2=a-c=3a$ となります。

階差数列 $\curl{w_n}$ についての条件から一般項 $w_n$ を求める

階差数列の一般項を求める

次に、階差数列 $\curl{w_n}$ が等差数列であるという条件から、 $\curl{w_n}$ の一般項を求めます。

そのために、 $\curl{w_n}$ の初項と交差を計算します。

  • 初項: $w_1=c-b=-\frac{3}{2}a\,,$
  • 交差 $d$: $w_2-w_1=3a-(-\frac{3}{2}a)=\frac{9}{2}a\,.$

したがって、階差数列 $\curl{w_n}$ の一般項は、次のようになります。

\begin{align*}
w_n&=w_1+(n-1)d\\
&=-\frac{3}{2}a +(n-1)\frac{9}{2}a \\
&=\frac{9n-12}{2}a \,.
\end{align*}

階差数列 $\curl{w_n}$ の和を取って元の数列の一般項 $z_n$ を求める(\eqref{diff_sum}による変換)

階差数列の一般項から元の数列への変換

\eqref{diff_sum}を使って、数列 $\curl{z_n}$ の一般項 $z_n$ を計算します。

\begin{align*}
z_n
&=z_1+\sum_{k=1}^{n-1} w_k \\
&=b+\sum_{k=1}^{n-1} \frac{9k-12}{2}a \\
&=-\frac{1}{2}a+\frac{9}{2}\frac{(n-1)n}{2}a -6(n-1)a \\
&=\frac{1}{4}(9n^2-33n+22)a \,.
\end{align*}

$n=1\,,2$ を代入してみると、この式が正しいことが確かめられます。

以上で、一般項が求められました。

具体例② 2段階の階差数列

数列に対して、2段階の階差数列を経由して一般項を求めることもあります。
具体例を1つ挙げます。

次の数列の一般項を求めよ。$\curl{a_n}\,:\,1\,,12\,,123\,,1234\,,\cdots$

長くなるので詳細は省きますが、解答です。

数列と階差数列と2段階の階差数列の関係

$\curl{a_n}$ の階差数列は $\curl{b_n}\,:\,11\,,111\,,1111\,,\cdots\,.$

更に、 $\curl{b_n}$ の階差数列は $\curl{c_n}\,:\,100\,,1000\,,10000\,,\cdots\,.$
これは初項が $100$ 、項比が $10$ の等比数列です。

順番に一般項を求めていくと、 $c_n=10\cdot 10^n\,,b_n=11-\frac{10^2}{9}(1-10^{n-1})$ となるので、元の数列の一般項 $a_n$ は次のようになります。

\begin{align*}
a_n=1-\dfrac{n-1}{9}+\Pare{\dfrac{10}{9}}^2(10^{n-1}-1)\,.
\end{align*}

良かったら計算してみてくださいね。

最も簡単な階差数列の例は、整数上の2次関数 $a_n:=n^2$ の数列 $\curl{a_n}$ で、それの1段階と2段階の階差を取った数列の一般項はそれぞれ $b_n=2n+1\,,c_n=2$ となります。
元の2次式が1次式、0次式と次数が1つずつ下がっていってますね。

更に、整数上の2次関数 $a’_n:=\dfrac{1}{2}g n^2$ の数列 $\curl{a’_n}$ を考えてみると、それの2段階の階差を取った数列の一般項は $c’_n=\dfrac{1}{2}g \times 2=g$ となります。
これは、まさしく自由落下運動において加速度が一定の値 $g$ になることに相当します。

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