今回は、部分積分と部分和分の類似点を見ていきます。
そして、図を使って部分積分と部分和分の関係をイメージしやすくします。
はじめに、部分積分の式です。
\begin{align}
\int_{a}^b f'(x)g(x)dx = \Squa{f(x)g(x)}_{a}^b\, – \int_{a}^b f(x)g'(x)dx\,.\label{int_parts}
\end{align}
そしてこちらが部分和分の式です。
\begin{align}
\sum_{i=N}^M (f_{i+1}-f_{i}) g_i
=(f_{M+1}g_{M}-f_{N}g_{N-1})-\sum_{i=N}^M f_i(g_{i}-g_{i-1}) \,. \label{sum_parts}
\end{align}
各種記号についての定義は何もしていませんが、今回はこれらの式について見ていきましょう。
部分和分の式を小さな例と図で確認
\eqref{sum_parts}が成り立つことは次のようにして確かめられます。
\begin{align*}
&\sum_{i=N}^M (f_{i+1}-f_{i}) g_i \\
=&f_{M+1}g_{M} + \sum_{i=N-1}^{M-1} f_{i+1}g_{i} \,- f_{N}g_{N-1} \, – \sum_{i=N}^{M} f_{i}g_{i}\\
=&(f_{M+1}g_{M}-f_{N}g_{N-1}) + \sum_{i=N}^{M} f_{i}g_{i-1}-\sum_{i=N}^{M} f_{i}g_{i}\\
=&(f_{M+1}g_{M}-f_{N}g_{N-1})-\sum_{i=N}^M f_i(g_{i}-g_{i-1}) \,.
\end{align*}
ここで、\eqref{sum_parts} で $N=2\,,M=4$ としたときの例を、図と共に見てみましょう。
\eqref{sum_parts}が成り立つことを再度確認するために式変形をすると、
\begin{align*}
&\sum_{i=2}^4 (f_{i+1}-f_{i}) g_i + \sum_{i=2}^4 f_i(g_{i}-g_{i-1})\\
=&(f_3g_2-f_2g_2+f_4g_3-f_3g_3+f_5g_4-f_4g_4)+(f_2g_2-f_2g_1+f_3g_3-f_3g_2+f_4g_4-f_4g_3)\\
=&f_5g_4-f_2g_1\,.
\end{align*}
さて、部分和分\eqref{sum_parts}の左辺にある和分 $\sum_{i=2}^4 (f_{i+1}-f_{i}) g_i$ に現れる関数を図にしてみましょう。
次の図では、$i=1\,,2\,,\cdots\,,5$ に対して横軸を $f_i$ 、縦軸を $g_i$ として、交点であるマス目はそれらの積を意味しています。
一方、部分和分\eqref{sum_parts}の右辺第2項の和分 $\sum_{i=2}^4 f_i(g_{i}-g_{i-1})$ に現れる関数を図にしてみましょう。
そして、これらを重ね合わせた次の図が部分和分\eqref{sum_parts}に現れる項となります。
これを見ると、部分和分\eqref{sum_parts}における2つの和分の持つ項が紫色の部分で共通していることや、$f_5g_4$ と $f_2g_1$ が部分和分\eqref{sum_parts}の右辺第1項のように剰余として現れることがわかりますね。
部分和分をたくさんくっつけると部分積分になる?
では、先程のような部分和分の範囲をもっと広げたらどうなるでしょうか?
すなわち、$i=N\,,N+1\,,\cdots\,,M$ の $N$ と $M$ の差を大きくしていくと上の図はどのようになるでしょうか?
その結果がこちらの図です。
両端の赤色と青色のブロックが1つずつ余っていて、その間の紫色の部分がほぼ一直線になっているように見えますね。
この色のついた部分は1次元空間の領域と境界であると見なせそうです。
これはすごく粗く言ってしまうと、もっとブロックの数を増やせば部分和分\eqref{sum_parts}は部分積分\eqref{int_parts}に近づいていきそうではないか?ということです。
両端の点をそれぞれ $a\,,b$ と名付けます。
紫色の部分に\eqref{int_parts}の積分項 $\int_{a}^b \cdots dx$ が現れて、そして両端の赤色と青色の部分に\eqref{int_parts}の $\Squa{f(x)g(x)}_{a}^b=f(b)g(b)-f(a)g(a)$ が現れそうです。
このように、紫色の部分は積分領域 $\Omega:=(a\,,b)$ に対応し、青色と赤色の部分はその境界 $\partial \Omega=\curl{a\,,b}$ に対応すると見ることができるかもしれません。
部分和分は定義の仕方にもよりますが、今回見たように端っこが特殊な要素となっています。
数値計算でも、この端っこ(境界条件)をいいかげんに扱ってしまうと、計算結果がおかしなことになってしまうので特に注意が必要です。
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