電磁誘導と誘導起電力についてイメージしやすい例題です。
今、一様な磁場 $\Bs{B}$ がある。
長さ $\ell$ の導線をその一方を中心にして、図のように磁場を垂直に横切るように角速度 $\omega$ で回転させたとき、導線に生じる誘導起電力の向きと大きさを答えよ。

ここからは、上から見た次の図を使って考えることにします。
ただし、導線の運動が描く円軌道の中心を $\text{O}$ として、導線 $\text{O}\text{P}$ は時間 $\Delta t$ の間に $\text{O}\text{P}’$ の位置まで動くものとします。

は画面手前から奥に向かう方向、
は画面奥から手前に向かう方向を表す記号です。
これらは、ネジの頭の穴と先端の尖った部分をイメージして使われています。
まず、導線に生じる誘導起電力の向きを順番に考えていきましょう。
- 時間が経過すると導線 $\text{O}\text{P}$ が通った部分 $\text{O}\text{P}\text{P}’$
の面積が増加します。
- すると、
を貫いた
の向きの磁束の数が増加します。
- すると、レンツの法則から、
を貫く
の向きの磁束を減らす方向に誘導起電力が生じます。
(=の向きの磁束を増やす方向)
- つまり、次の図のような磁束を増やすように誘導電流が生じます。

- 生じた誘導電流は、右ネジの法則から次の図のような向きの電流です。

- したがって、このような向きに誘導電流が生じるのは、導線上を $\text{P}’$ から $\text{O}$ の向きに誘導起電力が生じているときです。
以上より、円軌道の外側から回転の中心方向に向かって導線上に誘導起電力が生じることがわかりました。
次に、生じる誘導起電力の大きさを求めます。
時間 $\Delta t$ が経過するときに、導線 $\text{O}\text{P}$ が通った部分 $\text{O}\text{P}\text{P}’$ の面積 $\Delta S$ を計算します。
これは扇形 $\text{O}\text{P}\text{P}’$ の面積を計算すればいいから、
\begin{align}
\Delta S = \dfrac{1}{2}\ell^2 \omega \Delta t\,.\label{prob01}
\end{align}
このとき、磁場 $\Bs{B}$ の大きさを $B$ として、導線 $\text{O}\text{P}$ が通った部分 $\text{O}\text{P}\text{P}’$ を貫いた磁束 $\Delta \varPhi$ は、
\begin{align}
\Delta \varPhi
&=B \Delta S \,.\label{prob02}
\end{align}
ファラデーの法則より、誘導起電力の大きさ $V$ は、
\begin{align}
V
&=\Abs{-\dfrac{\Delta \varPhi}{\Delta t}} \nonumber \\
&= \dfrac{B\Delta S}{\Delta t} \quad (\because\,\eqref{prob02}\,\text{より}) \nonumber \\
&= \dfrac{1}{2}B \ell^2 \omega\,. \quad (\because\,\eqref{prob01}\,\text{より})
\end{align}
注意すべきポイントは、ファラデーの法則の符号部分です。
先程も使用した次図のように、誘導起電力は元の磁場(左側の図)とは逆向きの磁場(右側の図)を作るような電流を生じさせるものでした。
そのため、発生した磁場は元の磁場にマイナスの符号がついたものになっています。
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